CRSレポート⑨ お子さんの大学受験を終えて

瞑想

Aさん   子供を日本の大学に送り出し、自分の気持ちにもっと向き合えるかと思って参加しました。子供を大学に送り出すまでは、感情の振り幅が大きくて、息子に、「自分の事は全然心配じゃないけど、ママの事が心配だ。」と言われ続けました。普段私たち親子はあまり喧嘩をしないのだけど、この夏日本にいる間、かなり喧嘩をしました。彼はずっとニューヨークで育っているので、日本での天災、例えば地震とかに慣れていないし、私たちもハリケーンサンディーで5日間ぐらいの停電を経験していて、連絡が取れない不安や不便さを知っているから、せめて充電器、懐中電灯ぐらいは持っていてとお願いしたのだけど、本人は嫌だというのです。心配し過ぎだと・・。でも、私の妹から同じことを言われると素直に聞くのです。私とは喧嘩が絶えないのに、なぜだろうと考えて、そうだ、彼は、無意識に親から自立しようとしているし、私にそういう態度を取る事で、私に子離れをして良いのだと教えてくれていると思ったのです。

悦子   Aさんもどこかで、母親としてのパワーを残しておこうというのがあったかもしれないですね。

Aさん   そうです。それでぶつかっていたのですが、注意深く彼を見ていくと、自立というか、それに向かっていく喜びの力が強いのです。それで、喧嘩ばかりするのも嫌なので、もっと引いたところから、彼を見ていくようにしてみました。

悦子   息子さんも今まで以上に広がる世界を喜びで受け入れていたのですね。

Aさん   息子が、喜んではいるけれど、浮き足立ってはいない姿を見て、徐々に安心感が湧いてきました。お互いにぶつかり合いながらですが、肉体的な距離を少しずつ広げられた。心の距離は、ここで教えて頂いたように、全然離れてはいないのがわかります。私は、日本では泣いていたのに、ニューヨークに戻ってきてからは、一度も泣いていないし、感傷的になってもいないことに驚いています。先日、彼が軽い怪我をしたのですが、その時も携帯のラインに連絡があり、ラインは私の姉妹とも繋がっていて、すぐに色々メッセージを入れてくれていたのですね。こちらは夜中だったのですが、いままでならすぐにメッセージを返すような母親でしたが、彼が周りのサポートを受け入れる様子を見て、守られていると嬉しくもありました。会話に入っていきたいけれど、そこをぐっとこらえて、彼らの会話が落ちついた頃に、メッセージを入れました。2、30分ぐらいたったでしょうか。彼と電話で話し、怪我について病院の事や、こうした方がいいよと、言いたい事はいっぱいあったのですが、彼は自分で管理できるし、学校もあるからと言うので彼の意見を尊重しました。以前の自分だったら、すぐに飛行機のチケットを取って、来なくて良いと言われても押しかけて行ったと思うのですが・・。

永保子  伝わっているものは、やはり愛なのだということを感じますね。

Aさん   彼の強さというのを見せてもらいました。彼はやせ我慢して大丈夫と言っている訳じゃないのだと・・。大人の階段を昇っているのだなぁと。それを俯瞰して見れたという事が、自分の中での大きな驚きです。不思議ですねぇ、なぜでしょう?

悦子   やはり母と息子を超えて、信頼関係を作れたという事。生まれてからこれまでの中で人間として信頼出来る、自分の子供という概念を超えて見られるようになったのではないですか?

Aさん   傍にいると分からなかったこともあります。それにその準備が自分に出来ていると思っていなかったから。

悦子  そうね、母親はどこかで子供は自分の私有物のように扱いがちですから。

Aさん   ここで教えてもらった事が、すごく役立ったと思います。心に隙間ができるかもしれないと思っていたけれど、そうではないし、実際、寂しくはないんです。

永保子   Aさんは寂しくてお子さんにくっついていた訳ではないと思いますよ。お子さんの心とつながっている時ってどんな感じでしたか?

Aさん   子供といるときって、すごく楽しいのです。今までは、彼が学校から帰ってきて、学校であった事とか、感じた事をずっとシェアしてくれていて、友達のようでした。

悦子  Aさんの息子さんと私の息子はずっと同じ学校なので、そばで見ていましたが、Aさんは、息子さんと一緒になんでも共有してやっていた感じがありますよね。

Aさん   そうなんです。彼が夢中になっている事をとても詳しく説明してくれると、話を聞くのを面倒くさいとかつまらないと思った事が一度も無いのです。だから、こんなに楽しい毎日が無くなる、私が話しかけたら答えてくれる時間がなくなると思うと、私はどうなっちゃうのかしらというのが大きかったですね。でも離れてみても心に穴は空かないし、逆に主人との会話が増えてきました(笑)。

悦子   ご主人も喜んでいるのではないですか?今までは息子さんがどうしても真ん中にいて、何かあったら息子さんからという優先順位があったと思うのですね。

Aさん  そうです。主人も一緒に彼を送りに行ったのですが、彼は彼なりに息子との別れ方を考えていて驚かされました。スケッチブックを買っておいてと言われたのですが、今まで主人と息子が一緒に観た映画の半券を全部貼って、息子に渡したのです。二人の共通の趣味は映画を観る事で、小さい頃からですから何百枚も。そして最後にTo be continuedって書かれていました。それを見た時に、主人には主人なりの別れ方があるのだと気づきました。

悦子   お父さんと息子さん、二人で築いてきたものがあるのですね。

Aさん   今までは、友達お父さんのような面を不足に思っていたのですが、それを見た時に、彼なりに父親としてやってきたのだと気づきました。そしてそれを見たから、こちらに戻ってきてから、主人に対しても俯瞰して見るようになった気がするし、息子と別れても寂しくないことに驚いています。

永保子   寂しくないと言える確信はどこからきているのでしょうね?

Aさん   ずっとどうしてだろうと考えていたのですが、やっぱり安心感、心の安定だと思います。彼のぶれないところや、彼を支えてくれる日本の家族、寮の友人や先生とお話しして、全部の状況が、私に光を見せてくれました。一つ一つの出来事すべてをひっくるめて、私の心が安定していることに気づかされました。お母さんだから安心したという事ではなく、私の心に安心を見ることができました。

永保子  お母さんとしてお子さんだけを見ているというのを超えて、関わる人たちに心を開いて、その心と心のつながりから安心と光が受け取れたというのがキーですね。

Aさん  はじめて彼を学校に連れて行った時、ぎゅっと繋いだ手を離すと、校庭に駆けて行った後ろ姿に光を見せてもらった、あの感覚を思い出しました。彼が18歳になって、そんなことを思い出すのはとても不思議なのですが、あのイメージが離れないので、今はその光を忘れないようにしています。

悦子   それは Aさんの体の中にもうすとんと落ちて、核になっているのだから、もう何があってもそこに戻れますね。

Aさん  子供が大きくなったから、仕事をしている自分でいなきゃと思うのも同じことで、本質はそこではないなと気づきました。それを体で感じられたのはとてもありがたかったです。今、私は何もしていないじゃないかと自分を責める事はあります。でも、これまでと違う形で、本当に自分がやりたい事ができるよう、心を落ちつかせている状態です。

永保子   そうですね、私たちのアイデンティティーは母親でも妻でもなく、女性でもなく日本人でもなくて、スピリットなのだと。スピリットの安心と共に、お皿を洗い、お出かけし、人と会い、安心をシェアしたいということですね。私たちは、すごく雑に乱暴に自分の心を扱って、自分のしていることも、していないことも、ジャッジしがちですが、本当は、心を丁寧に優しく扱いたいんですよね。それには、自分はまだまだだというチェックをつけずに、今あるものを表現していくしかないのだなあと思います。心の安定というのは今なのだから、今ここで心を使っていく、その先に何が起こっていくのかは、私たちにはわからないけれど、今、優しい心を分かち合う事で受け取ることができると思います。

Aさん   ヨガの先生が、忘れられない話があると言って教えてくれました。彼は世界中を旅して回っているのですが、サンフランシスコのベイリッジエリアで皆が日光浴をしていた良いお天気の日に、一人の人が蟹釣りをしていたと。蟹釣りの網はバケッ型で、上は大きく開いているもので、引き上げるたびにたくさん蟹が網にひっかかってくるのだそうです。蟹は上に昇って出ようとすれば出れるのにそれをしない。それを見ていて、ああ、人間と同じだなと。真ん中の安定している場所にしがみついている。自分の限界なんて無いのに、そこから出ようと思えば出れるはずなのに。本当はネット自体も無いと思うのだけれど・・と。その話を聞いて、そのイメージが焼き付いています。

悦子   そこでしか自分が生きられないと思ってしまう事が一番恐いことですね。本当はいつでも違うことを選べるのに、自分が自分の役割と思っている事をずっと演じてしまう。そして考える事をやめて、ここにいたら安心、自分の役割と思っていることだけをやっていく。母親として、妻として。たしかにそれは自分の一部であるけれど、それだけではないと自分で考える選択肢は常に持つ事ですね。

Aさん   ここで教えて頂いた事がなかったら、今こんなにすっきりしていられたかなと思います。これからも、自分に課題を課すというような大それた事じゃなく、自然にそれが出来ていったらいいなと思います。

永保子   Aさんはすでに心を逆転されましたよね。

悦子  息子さんの受験のときは、端から見ていても、かなりアップアップしていましたものね。

Aさん  子育てに終わりはないと思うのですが、ちょうど区切りのような時期にクラスに出させて頂いて、その途中でも色々ありましたので、虫が暗闇から光の方に向かうように、こちらに導いてもらったというか・・。

永保子  私は本当にAさんを通しての愛の深さを感じるのですね、逆転する事が出来たというのは、愛でなかったら出来ないと思います。それは執着ではなくて、本当に息子さんを思う気持ちからですよね。Aさんは、楽しく子育てをしてこられた、だから息子さんも喜びで溢れているのですね。たくさん彼は受けとっているのですね。お話を聞かせて頂いている中で、 Aさんが、今の状況があるから安心したのではないとおっしゃったところがとても大事ですよね。息子さんの奥にある光、心にある光、みんなの繋がりを見る事で安心された。上手く行っているから安心、合格したから安心、となりがちだけど、そうでは無いのですね。

Aさん  まさしくそうでした。彼本人が環境に恵まれたとか、友達が良かったからとか、アメリカで育ったからとか、それは要素であって、自分の光がもっと放射出来るようになっているのを見れたことが安心につながりました。

永保子  どうしたら子供の光を見ていけるのか、その心の組み立て方というか、向きあい方、スタンスとは、どういうものだと思いますか?

Aさん  私の場合はもちろん経験があって、それを経験しているときの視線だと思うのです。

永保子  そうですね、こうじゃなくてはいけないという思いがあると、光は見えないと思うけれど、コントロールではなくて、本当の幸せを願う無償の愛があると思うの。

Aさん  それは、一番大きいですね。彼は彼で喜んで独り立ちして、楽しんでやることだと。そのかけらを見た事で、一回一回それを目の前で確認しなくても、もうそれは私に届いている感じです。光を見るためには、経験をどう見るか、その視線を自分で勉強するには、やはりここで学んだ事を自分のお腹に落として考える必要があって、頭で分かっているというだけでは、違っていると思います。

永保子  そうですね、私たちには、世間の物差しを当てて、子供にはこうであって、ああであって欲しいというのが、正直言ってあるかもしれませんね。そこのところはどうでしょう?

Aさん  もちろん良い大学に入ってくれたら嬉しいし、実際に、親戚の態度も手のひらかえしたように私に優しくなりました。そういう周りの反応を見ると、俗にいうブランドの大きさを感じるし、エゴがくすぐられない訳ではないです。自尊心をくすぐられるということもあります。自分の事ではないのに、自分がちゃんと育てたからこうなったのよというエゴの声がちょっとします。汚い声も聞こえますよ。ほら、あなたの息子より出来るのよ、とか、数えだしたらきりがないぐらい。でも息子の反応を見ていると、学校の看板を背負っている訳ではないとしっかりした反応があるので、そんなブランドに拘る事はないのだと、自分も背筋が伸びるところがあります。でも、彼が違う大学に行っていたら、同じ気持ちを保てたのかは、まだ分からないです。

悦子  そうですね、子供たちの価値観もそこだけでない。それこそ日本人はブランド名で大学を目指すところがあるけど、こちらの子たちは、有名な大学に受かっていても、それだけで進路を考えてはいないようです。

Aさん  私は息子の中に光を見たのですね。だからどんな事があっても安心できると感じるんです。心配の種を探したら、きりがないですね。これは有名校でも同じだと思います。親として、安心な学校、安心な就職、そういう風に進んで欲しいという気持ちは分かります。でも、私が考える息子のベストと、彼が考えていることは違うということ。こっちの方がいいじゃないと、アドバイスとしては思うけど、最終的には彼が決めていく事だと思っています。

永保子  Aさんの場合、小さい時から色々な選択肢は与えるけれど、最終的には息子さんに任せてこられたのですね。

Aさん  はい。今小さいお子さんを育てている方は、大変だと思います。最近、小学生のお母さんの話を聞いて特に思いました。塾の話や家庭教師の話、また同じグループに教育熱心な親御さんがいると、周りも引っ張られたりして。どんどん過熱化しているような気もします。息子のときは、土曜日の補習校だけでも大変だったけれど、今のお子さんたちは、補習校に行って、その後に塾に通っています。土曜日も掛け持ちですよ。それに他の習い事を入れたら、ものすごいスケジュールですが、遊ぶ時間もなく、お子さんたちはよくやっているなと思います。

永保子  コントロールすることで、安心を得ようとするのは難しいでしょうね。

Aさん  そう、平日は習い事や、現地校と補習校と塾の宿題。「子供たちは文句を言わないの?」って聞いたら、「周りが皆そうだから、あたりまえだと思っている。」と言うのですね。

永保子  子供にも、自分一人のスペースと本当にゆっくり好きな事をする時間というのはとても大事ではないかと思います。言うことを聞くからといって、どんどん親が介入していって、好きな時間を持つのを許さないでコントロールすると、大人になった時に、自分で自分が何をしたいのか、わかるのでしょうか?

Aさん  良い母親でいる事が自分の証明になっているので、子供のためと言いながら、自分のためなのだなというのを感じますね。もちろん表面は上手く行っている親子も沢山いるだろうけれど。

悦子  将来その反動が出る場合が多いですね、社会に出てから。

Aさん  テストもどんどん難しくなっているようですし、それが本当の学力なのか?知力に繋がっていっているのだろうかと思います。

永保子  周りからの目、世間体とか規格に合わせるのではなく、自分の中に沸き上がるものに、親子で心を投入してやってみる、そんな子育てが出来たらいいですね。

Aさん  この子は本当に何が好きなのだろうと、それを見つけるためにお試し的にやることはありました。何に向いているじゃなくて、何が好きか、夢中になれる事を見つけて、それがどう彼に関わっていくのだろうということに興味があったので、小さい事から、したいという事、好きだと言う事は飽きるまでとことんやらせてあげました。

悦子  もちろんAさんもとてもインボルブして子育てをしたけれど、息子さんもその愛情に答えてくれた、その彼の受け皿もとても大きいものがあったと思いますよ。

Aさん  本当です。これが一つずれていたり、何か掛け違うと、家庭内暴力になったりする可能性もあるのですから。クラスに出させて頂いて、先輩たちから学ばさせて頂いた事は、とても大きかったです。安心感って、伝染していくというか伝わっていくものですね。

永保子  不安も人を巻き込んでいきますね。子供を育てるプロセスで、安心を伝えていきたいと思うから、自分自身が安心した心でいたいと思います。それを、子育ての目的にしていきたいですね。ありがとうございました。

タグから検索
タグから検索
アーカイブ