「おかあさん」佐々木卓也・作品集  文・岸田今日子 写真・堀口眞澄

佐々木卓也さんは、1975年に東京で生まれ、3歳の時に自閉症とわかります。2歳の頃から粘土に触れ始め、8歳になると陶芸の土も使うようになり、以来、毎日のように、作品を作り続けています。14歳の時に、遠足の絵が国語の教科書に採用されたことを皮切りに、これまで、ギャラリーや美術館、その他で出品された作品は、数えられないほどです。

 最近では、国連が定めた世界自閉症啓発デーに、アーティストの一人として作品を提供なさっています。

 「おかあさん」に納められている動物の造形作品は、卓也さんが10代後半の頃の作品です。動物たちは、どの子供たちも、親にぴったりとくっついています。

 それを見るたびに、卓也さんのお母様である佐々木睦子さんは、「私は、これは卓也の寂しい心の叫びではないだろうかとさえ考えます。これでもかこれでもかと母親のぬくもりを求めている彼や、友だちといっしょに遊びたいよと叫んでいる彼の心がそこにそのまま現れている気がするのです。」と書かれておられます。

 卓也さんの作品は、お母様の睦子さんだけでなく、私の心をも映し、親子のつながりの確かさを一心に確かめようとする切ないまでの衝動や、沢山の人たちや世界との関わりへのちょっとした怖さと、それでも、そこには、抵抗しようもなく広がっていく喜びがあることを、感じさせてくれます。

 その卓也さんの作品に、岸田今日子さんが、親と子の会話を、ひとつひとつ付けようというお話になった時、「少しブラックになってもいいかしら」とおっしゃったそうです。「ほのぼのとかわいらしい会話を、この人たちが交わしているとは信じられなかったのだ。」そうです。

 岸田さんの書かれた文章の中では、子供たちは、子供同士で何でも言い合い、親にも遠慮なく問いかけます。親たちは(父親も一人登場します)、正直に答えつつも、困ったり、戸惑ったり、うるさがったりしているわけです。

 ですが、そこには、なんとも穏やかで、全部を受け入れている感触や、今のままではダメだからと、悲しがってはいないから出てくるだろう言葉や、いい親子であろうと頑張ってはいない、力の抜けたユーモラスな感じが伝わってくるように思いました。 

 作品集をご覧になれば、きっと皆さんも、「これは私たち親子だわ」とか、「これは、私と子供たちの会話だわ。」と、微笑む作品があるのではと思います。ちなみに私は、にわとりの親子やカンガルーの親子のようだと思いましたが・・。

管理人 小野

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